けいあんの御触書

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珍しく映画感想 「15時17分、パリ行き」

 タイトル通りこのblogにしては珍しい映画感想です。ラブライブ!サンシャイン!!の最終話感想でも書いた「人間賛歌」、これを描く作品に私はめっぽう弱いのですよ……。この作品も日の目を浴びてこず、目標の道からは逸れてしまった主人公たちが、逸れた道で得た事を緊急時に全て活かしたという点が刺さったのですね。

 ネタバレ全開の感想を書くので、見に行きたいけどネタバレ見たくない人は一時引き返してください。ネタバレ上等、ネタバレ見た上で作品見てやるぞという人は読んでみてください。




 この作品を知ったのは本当に偶然。自分のTwitterクライアントには、無差別に情報を集めるための情報収集タブがいくつもあるのですが、「ピカデリー」という言葉の中に入ってきたのがこの作品でした。その内容は……
 「丸の内ピカデリーでは『15時17分、パリ行き』を15時17分に上映開始する回がある」
というもの。たったこれだけの情報で興味を惹かれたんですよ。公式サイトへ行ってみると地元での上映もあるぞ、さて内容は……と思って見えたのがアレク・スカラトス/スペンサー・ストーン/アンソニー・サドラーの主演3人が「当事者本人」って説明ですよ。なんだそれ。もちろん生還しているからこそ出来る事ではあるのですが、すごい試みですよ。またこれは後から知ることになるのですが、列車内でのテロ発生シーンに出演したのも当時の乗客たちでして「銃で撃たれて重傷を負った人」も「その撃たれた人の奥さん」も実際の乗客そのものなのですよ。パニックになった人も役者じゃないの。これ、知っていて見た自分は「えっえっこれ当事者なの?こんな臨場感溢れる画面を作れるの?」ってなりましたし、知らなければこの話を知って振り返った時に「本当かよ……」ってなるのが必至でしょ。「当事者本人出演」という本来なら不安要素にしかならないような事柄が、ここまで効果的なんて思わなかったんです。

 効果的という点では作品の大半を占める主人公3人を追う映像も、なのです。10歳前後であろう序盤の振り返り、そして成人付近での進路についての話、そして事件と遭遇する旅のシーンに約1時間が費やされます。テロを描いた映画と思って見に行くと3/4ほどを占めるこれらのシーンに驚かれるでしょう。しかしながら小さい頃の学校での様々なやり取り、不本意な所属先になった所で学んだこと、そして旅先での出会いによる旅程の変更などなどが最後のシーンに綺麗に集約されていき「人生の全てこの時のためのもの」という形で描かれているのです。もちろん映画ですから関係ある部分だけを掻い摘んでいるので、実際にはこの事件に関わらない時間もたくさんあったはずです。でもそんな多くの時間の中から「この時」に活かせるものがある……これらの下地があったからこその勇気ある行動だったのだ、というのが描かれたのがグッと来たのですよ。さらに旅のシーンの緩んだ状況から、テロによってその日常が一気に覆されるというメリハリにも繋がっていて、上手いなぁと関心しきりだったのです。
 最後に実際に表彰された時と地元でのパレード映像が使われていたわけですけど、本人が出演していたからこその違和感の無さと、そこで語られていた言葉の重みが増していて、エンドロールでは目頭が熱くなりっぱなしでした。そのエンドロールで出演者が本人だと気付く人も多いようで……いやあ、それも経験したかったなぁ……でも知っていたからこその驚きもあったわけでね。

 後から振り返ると綺麗に繋がっていたことが分かるだけに、2度目を見てすべてがわかった状態での感じ方の変化を楽しみたいですな。