大学時代に知り合った友人が無類の日本ファルコムファンでして、その友人から知ったのが新海誠さんでした。最初に見せられたのが「イースⅡ OP」からの「ほしのこえ」。後者は見てみたら好みの物語だった上に、後から絵作りは1人でと聞いて2度びっくり。これが1人で作れてしまう時代なのか……と驚いていたのが2002年。そこから新海誠さんの以前の作品を見て、新作が出るたびに見続けて14年が経過した今年公開されたのが「君の名は。」。映画公開に先駆けて小説等の関連書籍も発売されていましたが「最初は映像で」と思い封印。封切日朝一の舞台挨拶のチケットを確保し映画館に赴きましたが、新海誠さんのベストアルバム的存在と言うにふさわしい、新海誠集大成的な素晴らしい劇場作品に仕上がっていました。(ベストアルバム的は舞台挨拶での言葉)
予告を見て思い浮かべたのは大林宣彦監督の「転校生」、男女の入れ替わりがとても刺激的で、自分の幼少時に強く影響を与えた作品です。夢の中での入れ替わりを経て、最後に出会いが待っているのだろうと単純に思って臨んだらまさかのBTTF & 時かけ的展開ですよ。問題解決のために過去に戻るBTTFは今年の3部作上映(午前10時の映画祭にて)に行くぐらい好きな作品。記憶の奥深くに残る「会いたい人」との出会いを求める時かけは、ツツイストになる切っ掛けになった作品です。この2つの要素が上手く混ぜ込まれて「君の名は。」という最後のシーンに繋がる展開は熱くもあり切なくもありで、最後の最後までドキドキさせられっぱなしでした。過去の新海誠作品を知っているからこそ2人が近づくけど交わらないままなのか……なんて錯覚させられましたよね。それも意図的だと舞台挨拶で語っていて、昔からの新海ファンがやられたーって感じになっていましたが(自分も)。
これまでの新海誠さんの劇場作品とは違い、「君の名は。」では出会う所まできっちり描いて所謂ハッピーエンドになっていました。ですので見終えた時に「これはマニア以外の層にも受けそうだなー」と思っていましたが、公開から2日経っての評判を見る限りまさにその通りになってる感じ。マニア層以外にまで訴求したのが感じ取れます。というかカップル多いみたいですね……初日初回の舞台挨拶は流石に訓練された新海ファンが多かったのかカップル少なめでしたが^^;。尖った部分は少し減ったのが昔からのファンには寂しいかもしれませんが、新海誠テイストはきっちり盛り込んでいましたし、それでいて一般向けの脚本になっており、新海さんのストーリーテリング力が一気に上がったように感じられました。
そうそう新海誠さんの武器である背景美術にも触れないと。「言の葉の庭」と同様に今回も都心部の描写が多かったのですが、ここ2年は都心部を車で走ることが多かったのと、新宿の映画館通いが多かったおかげで、見覚えのある景色が沢山出てきました。あと三葉の感動も「わかるわかる」って感じ共有できたのは都外住みの特権だったかも。その三葉の故郷の方も、小さい頃によく連れて行かれた飛騨高山の方で、作中でのメインは架空の隕石落下地点になっていましたが、こういう空気感だったなーという感じで見ていました。風景・背景が綺麗に描かれているからこそ、空気の匂いも感じられるような錯覚を覚える、それが新海さんが描く背景の強みでしたが、出てくる舞台が2つとも馴染みがある場所だっただけに、その匂いがより強く感じられたのも自分にとっては加点ポイントでした。
演技については、主役2人が見事にはまっていましたね。立花瀧役の神木隆之介さん、宮水三葉役の上白石萌音さんともに、瀧くん/瀧ちゃん&三葉ちゃん/三葉くんという性別入れ替わりが発生する難しい表現が要求される役を、自然な感じで見られたのはこの2人の力量あってこそ。特に上白石萌音さんはそこまで経験がある方では無いのに、それを感じさせなかった点に驚かされました。声質も合っていて良かっとは思いましたが……でもこの作品のヒロインは間違いなく瀧ちゃんですよね。
2人の物語を何度も見返したい……そんな事を感じさせる良い作品でした。細かいネタバレや考察とかは今の自分には出来る余裕が無いので他の方にお任せしますが、初めて安心して万人に向けて勧められる新海作品、それがこの「君の名は。」だったと思っています。シン・ゴジラ同様、Twitterで話題になってじわじわと広まりつつありますし、東宝が宣伝に力を入れているおかげでしばらくは席が取りにくい状況が続きそうなのは嬉しい悲鳴かも。
余談。金曜日公開開始でこの席状況にはびっくりしましたよ……。
プレミアムラグジュアリーシート(通常料金+3000円)で見ましたのん。良い席だったなー。